目次
前回のブログでは、膝蓋腱障害について大まかに説明していきました。
今回は実際に膝蓋腱障害に効果的と言われているリハビリを紹介していきたいと思います。
おさらい
まず、前回の簡単なおさらいですが、膝蓋腱を痛める理由として、以下の理由が考えられます。
- オーバーユーズ:トレーニング量が増えることで腱へのストレスが増え、ダメージが蓄積する
- ハムストリング、大腿四頭筋の柔軟性の低下
- 大腿四頭筋の筋力不足
- ハムストリング、臀筋群をはじめとするPosterior Chain Musclesの筋力不足
- テクニック、フォーム、etc……
この痛める原因を理解せずに闇雲に”腱障害にはエキセントリック収縮のトレーニングが効果的”といってエキセントリック収縮のトレーニングばかりをおこなっても一向に効果が出ることはないと思います。
まずはしっかりと障害のメカニズムを理解すること、また腱障害がどの段階であるのかを把握することが効果的なリハビリを行う上で欠かすことができません。
では、どのように腱障害へアプローチして行くか、ポイントに分けていきたいと思います。
初期段階での活動制限
腱障害に限ったことではないですが、リハビリ初期段階でよく起きる間違いとして、痛みがあることを理由に患部を全く動かさない、いわゆる完全休養をさせてしまうことがあげられます。
例えば重度の骨折や医師から何らかの特別な理由がある場合は仕方ないかもしれないですが、現在では前十字靭帯の術後でもすぐに荷重をかけたり、可動域訓練をおこないます。
ここで重要なのは、完全に患部を動かさないのではなく Activity Modificationといって普段の活動を見直し、患部にかかる負荷をコントロールしていくことが重要になります。
膝蓋腱障害の場合、まずは腱にかかる負荷をコントロールすることが重要となりますが、腱にかかる負荷を軽減するには腱を構成する筋に直接アプローチしていく必要があります。
前回でもご紹介したように、膝蓋腱は大腿四頭筋から構成されています。
まずは大腿四頭筋に大きな負荷がかかる動作のジャンプ、スプリント、切り返しなどの活動を一時的に制限することで腱にかかるストレスを軽減することが必要となります。
またもう一つやりがちな考え方があり、リハビリに痛みは伴ってはいけない、いわゆるペインフリー(Pain free)でなければいけないという考えです。
腱障害に特に言えることですが、全く痛みが伴わないということはまずありえません。
もしかしたら、保護的になりすぎて必要な負荷すらかけられていないかもしれません。
さっき述べた、膝にかかる負荷を軽減しなければいけないということと少し矛盾するかもしれません。
しかし、重要なのはかける負荷の度合いです。
難しいかもしれませんが、この負荷を軽減しつつも適度な負荷をかけていかなければいけないという微妙なラインがリハビリの重要な部分でもあります。
それではどのように負荷の度量を決定していけば良いでしょうか?
負荷設定
よく使える指標として、痛みの範囲を0ー10段階で表現します。
0=痛みなし
10=今まで経験した中で一番痛い痛み
この0−10段階を指標とし、トレーニング中に痛みの範囲がトレーニングを始める前の状態から2−3段階で収まるくらいの強度を指標とします。
また、24時間ウィンドウといい、トレーニングの24時間後に痛みがどのような状態になっているかを確認するのも効果的な指標です。
もし痛みが24時間後にも引かずにトレーニング前より悪化していれば、トレーニングの負荷が大き過ぎたかもしれません。
ですので、次回のトレーニングでは少し修正し負荷をコントロールするという変更も可能となります。
- 痛みが3/10で収まる負荷でトレーニングを行う。
- 24時間後には元の状態に戻っていることを確認する。
ただ、痛みの種類にも気をつけて下さい。
筋肉痛(DOMS)などの場合はトレーニングの効果から来たものであるため、痛みがトレーニングによって悪化した痛みなのか、それとも程よい筋肉痛(Good Soreness)なのかを見極める必要があります。
以上のように、初期段階では痛みをトラッキングしてストレスをコントロールすることが重要になります。
大腿四頭筋強化
初期段階で負荷をコントールし患部が徐々に改善してくれば、段階的に少しずつ大腿四頭筋にかける負荷を上げていかなければいけません。
腱の性質として、負荷がかかることで耐久性が強化されていきます。
よく現場で見られる傾向として中臀筋や大臀筋などの臀筋ばかりに集中してしまい、腱にしっかりと負荷をかけれていないケースが見られます。
もちろんお尻の筋肉も大切ですが、腱障害で重要なのは、腱に適切な負荷をかけて耐久性を強化していくことです。
段階別トレーニング
大腿四頭筋の強化方法で重要なのは、段階別にトレーニング様式を変更していくことです。
ステップ1
初期段階では、患部に一番ストレスがかかりにくいアイソメトリックのトレーニングがより効果的かもしれません。
もしアイソトニック(コンセントリック・エキセントリック)のトレーニングで過度の痛みが出る場合、アイソメトリックから開始し、負荷をコントロールしていく必要があります。
ステップ2
段々とアイソメトリック様式の負荷に耐えられるようになれば、Step2ではコンセントリック、エキセントリックのトレーニング様式で腱への負荷を上げていきます。
多くの論文でエキセントリック様式のトレーニングが一番腱障害のリハビリに有効であると言われていますが、近年トレーニングの様式に関係なく腱に負荷をかけることが一番重要であると言われてきています。
やはり最終的には腱にしっかりと負荷をかけることが重要なポイントとなってきます。
またトレーニングやり方一つをとっても腱にかかる負荷が大きく変わってくるので注意が必要です。
例えば、スクワットを行う際に、Knee Dominantといい、膝が前に出るやり方では、Hip Dominant という上半身を前に傾けお尻を後ろに突き出すやり方と比べて膝へかかる負荷がかなり違ってきます。

スクワットはリハビリでもよく使われる核となるトレーニングですが、やり方次第では負荷を超過してしまい痛みを悪化させてしまう原因となる可能性があるので注意が必要です。
ステップ3
また、アイソトニックのトレーニングや負荷をかけたスクワットなどのウエイトリフティングなどの種目が行えるようになれば、最終段階としてランニング、ジャンプ、切り返しなどのプライオメトリックスのトレーニングを徐々に導入していきます。
この時、どのように着地するか、どのように減速しストップするかのフォームを確認することが重要になります。
例えば、もし着地の際に膝が前に出てしまういわゆるKnee Dominantの状態では、膝への負荷がかなり大きくなり、腱障害に限らずにもっと大きな怪我を引き起こす可能性もあります。
指導する際には、特に着地フォーム、スプリントからのストップする時のフォームにしっかりと着目し、ハムストリングや臀筋などがしっかりと使われているか確認をおこなうことが重要です。

まとめ
腱障害は慢性障害であり、一度良くなってもまた悪化を繰り返すように、完治することが難しいケースです。
この理由としては、腱にストレスがかかり続けること、トレーニングの効果がなかなか現れにくいこと、そして慢性的に痛みが続くことで心理的に痛みを増強してしまうことなど、色々な要因が考えられます。
これが腱障害のリハビリを難しくさせる所以であり、数ヶ月、ひどい場合では数年たっても完治しないケースも多く存在します。
正しい理解と知識をもちリハビリをおこなうことが、腱障害を完治させる上で最も重要な部分であり、もしこのブログが少しでも腱障害で悩まれている方の助けとなれば幸いです。
では、今回はこの辺で
アオキリョーキ
References:
- Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper’s knee: a prospective randomised study
- CURRENT CONCEPTS IN THE TREATMENT OF PATELLAR TENDINOPATHY IJSPT 2016
- Rehabilitation of Patellar Tendinopathy Using Hip Extensor Strengthening and Landing-Strategy Modification: Case Report With 6-Month Follow-up JOSPT 2015 Patellar Tendinopathy: Clinical Diagnosis, Load Management, and Advice for Challenging Case Presentations
- Patellar Tendinopathy: Clinical Diagnosis, Load Management, and Advice for Challenging Case Presentations
- Cook JL, Purdam CR. Is tendon pathology a continuum? A pathology model to explain the clinical presentation of load-induced tendinopathy. Br J Sports Med 2009;43:409–16.
- Neovascularisation and pain in jumper’s knee: a prospective clinical and sonographic study in elite junior volleyball players
- Patellar Tendinopathy: Clinical Diagnosis, Load Management and Advice for Challenging Case Presentation, JOSPT 2015
