股関節のケガ:グロインペインって何?

2021年も残すとこ僅かとなってきましたね。本当に時間が経つのは早いです。

 

さて、今回はスポーツ傷害として頻繁にみられる股関節の怪我をトピックにしてみました。

 

股関節の怪我は特にサッカー選手やホッケー選手に多くみられる怪我でもあります。

 

一昔前までは、症状がグロインエリア(股関節内転筋周辺)に出る疾患を総称してグロインペインと呼んでいました。

 

ただ、現在では症状をもとにもグロインペインをもっと細か〜く分類するようにもなってきました。

 

2015年に専門家達によって出されたDoha Agreementという論文ではアスリートによくみられる股関節の疾患を以下のように分類しています。

 

  • Adductor-related Groin Pain (内転筋が起因となるグロインペイン)
  • Iliopsoas-related Groin Pain(腸腰筋が起因となるグロインペイン)
  • Inguinal-related Groin Pain(鼠径部が起因となるグロインペイン)
  • Pubic-related Groin Pain(恥骨部が起因となるグロインペイン)
  • Hip-related Groin Pain(股関節が起因となるグロインペイン)

 

結局どれもグロインペインやん。とツッコミを入れたくもなりますが、とりあえず詳しくみていきましょう。

 

 

Adductor-related Groin Pain (内転筋が起因となるグロインペイン)

The Adductor Magnus; Not just for adduction anymore... — The Gait Guys

 

これは、内転筋が痛みのソースとなりグロインエリアへの痛みへとつながっていることが考えられます。

 

内転筋は太ももの内側に当たる筋肉で、この筋肉はサッカーなどの切り返し、スプリント、キックなどの過度に内転筋にストレスがかかるスポーツで痛めやすい部位でもあります。

 

内転筋の筋腱付着部がグロインエリアにある関係から、肉離れの部位によっては痛みがグロインエリアに及ぶことも十分可能性として考えられます。

 

内転筋は太ももの内側にある筋肉群の総称ですが、内転筋の中でも特に長内転筋(Adductor Longus)が損傷しやすい筋肉といわれています。

 

筋損傷の場合、重症度にもよりますがだいたい受傷から競技復帰までは2−3週間、重度の場合では3ヶ月以上の期間が必要となるかもしれませんが、後遺症として慢性的なグロインペインに悩ませられることも珍しくありません。

 

診断基準では、内転筋に圧痛があるか、また徒手筋力テスト(MMT)で力を入れた時に痛みが出るかを判断材料とします。

 

また、可動域の低下ストレッチ痛も筋損傷ではよくみられる症状です。

 

 

Iliopsoas-related Groin Pain(腸腰筋が起因となるグロインペイン)

Relationship between psoas, movement, bandhas and yoga

 

さて、次は骨盤 / 脊椎〜股関節をつなぐ筋肉の腸腰筋が痛みの原因となるグロインペインです。

 

腸腰筋は股関節の屈曲や体幹の安定性を供給している大事な筋肉ですが、オーバーユーズしやすい筋肉でもあります。

 

腸腰筋は鼠径部(グロインエリア)に密接している筋肉ですので、この腸腰筋の痛みが派生してグロインペインの原因となる可能性があります。

 

症状としては内転筋損傷と同じように、腸腰筋の圧痛ストレッチ痛また筋収縮させた際に伴う痛みが特徴としてあげられます。

 

さて、腸腰筋は自分の中でもかなり重要な筋肉と見ているのですが、

 

この理由はとしては、

 

腸腰筋はタイト(Tightness)になりやすい反面、ディスファンクション(機能不全)にもなりやすい筋肉なのです。

 

ここ10数年の間で、腸腰筋の重要性が脚光をあびるようになり、腸腰筋トレーニングが盛んにおこなわれるようになってきました。

 

確かに骨盤〜脊椎(体幹)の安定、スプリンターなどのパフォーマンスに腸腰筋は大事な筋肉であることは間違いないです。

 

しかし、その弊害として股関節周りの筋バランスが崩れることで腰痛を発症させたり、股関節の怪我に繋がる恐れを孕んでもいます。

 

バランスを無視したような過度の腸腰筋トレーニングやタイトだからといって腸腰筋のストレッチだけをおこなっていても機能改善は見込めません。

 

やはり、なんにしてもバランスというものがとっても大切ですよね。

 

大体の場合、股関節屈曲筋はオーバーユーズしやすいのに対して股関節伸展筋は軽視されがちです。個人的な意見ですが、もし屈曲筋を鍛えたらその倍以上に伸展筋を鍛える必要があると思っています。

 

さて、少し専門的な話となってしまいましたが、腸腰筋をはじめとしたHip Flexors(股関節屈曲筋)は痛みの原因(Pain Generator)となもりやすいのでグロインペインが腸腰筋から派生してきているのかをしっかりとチェックすることが大切でしょう。

 

 

Inguinal-related Groin Pain(鼠径部が起因となるグロインペイン)

 

まずInguinalは日本語に訳すると鼠径部と言います。

 

鼠径部とは骨盤の腸骨と恥骨を結んだラインの部分ですが、実はこのエリアにはとても大切な組織がひしめき合っているのです。

 

鼠径部に痛みがある場合、この痛みは鼠径管(Inguinal Canal)という鼠径靭帯の深層にある組織からきている可能性があります。

 

Diagram of right inguinal canal anatomy depicts the main elements that... | Download Scientific Diagram

 

 

ここで大事なのは、鼠径部の痛みが鼠径ヘルニアであるかどうかを見極めることがとても大切となります。

 

鼠径ヘルニアとは、一部脆くなった腹部の一部が壊れることで腹部の膜や小腸が鼠径管に突出する疾患です。

 

痛みが伴わないケースもあるので、ほっときがちになりますが手術以外に修復する方法はないので早期発見と早めの治療が必要となります。

 

まず鼠径部に痛みがある場合は鼠径ヘルニアかどうかを確認し、並行して鼠径部のどのエリアに痛みが出ているのかを突き止めることが大切となります。

 

 

Pubic-related Groin Pain(恥骨部が起因となるグロインペイン)

恥骨とは骨盤の中央下エリアにある骨盤の一部で左右の恥骨は恥骨結合(Symphysis Pubis)という軟骨組織でつながっています。

 

さて、なぜ恥骨がグロインペインの原因となる可能性があるのでしょうか?

 

実はこの恥骨は内転筋の起始(筋腱結合部)の部分を担っているからなんです。

Functional Integrative Rehabilitation Education - The Adductor Magnus

 

グロインペインが内転筋損傷から派生してくる可能性があると先ほど述べましたが、内転筋の起始部となっている恥骨には内転筋にかかる以上のストレスが加わっています。

 

元々、筋腱接合部はストレスに弱く損傷しやすい組織なので、蓄積したダメージによって炎症がおこり、それがグロインペインへとつながる可能性があります。

 

よく痛みがでる場所としては、Symphysis Pubis、内転筋起始の恥骨結節部(Pubic Tubercle)があげられます。

Osteitis Pubis

 

症状をみてみると、圧痛や徒手抵抗時での痛み、また運動を妨げるほど症状が出てしまうこともあり、パフォーマンスの低下にも大きくつながってしまいます。

 

また腹筋の一部は恥骨に結合しているので腹筋に力を入れたときに恥骨部に痛みがでる場合もあるので、併せて確認が必要となるでしょう。

 

 

Hip-related Groin Pain(股関節が起因となるグロインペイン)

 

股関節に関連する疾患は多岐に渡りますが、股関節の疾患が原因となったグロインペインも珍しくはありません。

 

これは股関節自体が複雑な構造をしているので、股関節の機能不全や痛みが元となり腰痛や骨盤周辺の痛みを引き起こす可能性があるからです。

 

 

それでは、まずは代表的な股関節の疾患を見ていきましょう。

 

股関節インピンジメント(Femoroacetabular impingement:FAI)

アスリートによく起こる代表的な股関節の疾患で、サッカーやアイスホッケー選手に非常に多くみられる怪我の一つです。

 

特に幼少期からの繰り返しのストレスが股関節に加わり、股関節を構成する骨に変形がおこってしまい、その変形した骨が原因となり痛みがひきおこされます。

 

FAIは変形がどこにあるかによって分類されていて、

 

大腿骨側にみられる変形をCam Lesion、骨盤側のアセタブラーにおこる変形をPincer Lesionと呼んでいます。

 

またこのCamとPincerが同時におこっているMix型も頻繁にみられます。

 

Mechanism of cam impingement. A normal spherical-shaped femoral head... | Download Scientific Diagram

 

 

FAIの代表的な症状としては

 

股関節屈曲+内転+内旋(通称:FADIR)股関節屈曲+外転+内旋(通称:FABIR)

 

という股関節の動きで痛みが伴うことが多く、実際にサッカー選手やアイスホッケー選手たちの動きを見てみると、

このFAIDRやFABIRといった股関節の動きが頻繁に行われていることがわかります。

 

 

この繰り返しの動作によって、骨自体にアダプテーションがおこってしまい、最終的に痛みのトリガーとなってしまうのでしょう。

 

さて、股関節周りには多くの神経が入り混じっていますので、インピンジメントがおこる際に派生してグロインエリアに痛みがでることも可能性としては十分考えられますよね。

 

それ以外にも、FAIによって股関節の可動域や機能自体も低下する恐れがあるので、その代償が他の組織への負担となり、腰痛や下肢の傷害につながる恐れもあります。

 

股関節脱臼(Hip Dysplasia / Hip Instability)

元々の関節弛緩性が強い方、特に女性で体操やフィギュアスケートなど高い柔軟性が求められるアスリートに発生するケースが多い疾患です。

 

股関節の脱臼は元より先天的な要素によって大きな影響を受ける疾患でもあります。

先天的に股関節の構造が脱臼しやすい構造や関節の安定を保つ機構が十分に機能していないとそれだけ脱臼をおこすリスクは必然的に高くなっていきます。

 

また、遺伝などの先天的な要素も加え、出産時の状態も将来的に脱臼を引き起こしやすくなる要因になるともいわれています。

 

例えば、大きめの胎児で逆子(出産時の体位が足から出てくる)であると将来的に股関節脱臼のリスクが高まるとかなんとか……

 

関節唇損傷(Labral tear)

関節唇とは関節の周りにある軟部組織で関節の接合性を向上させてくれたり、ショックアブザーバーの役割をしてくれている大事な組織です。

 

関節唇と聞いて他の関節でまず思い浮かぶのは肩関節ではないでしょうか。

 

肩関節と同様に関節唇は度重なる過度のストレスによって損傷しやすい組織ですので、切り返し、ターン、ダッシュ、キックなどの動作をおこなうアスリート、またサイクリング、ランニング愛好家の方々の間でもよくみられる疾患です。

 

Hip Labral Tears — Pro Dynamic Physical Therapy Inc.

 

Labral TearはFAIと併発しておこる場合やFAIが原因となりおこることも多いので、診断の際はFAIのテストと合わせて確認をとる必要があります。

 

また肩関節でもそうですが関節唇は軟骨同士の接触を緩衝してくれている大事な組織でもあります。

 

ですので、この組織に損傷がみられると軟骨同士のぶつかりが高まり、最終的に変形症(OA)を引きおこしてしまう可能性もあります。

 

もちろん、肩関節と同様で無症状のケースもありますが、症状がある場合は早めの治療をお勧めします。

 

 

まとめ

さて、今回はグロインペインについて今現在スポーツ医学ではどのようなアプローチをとっているのかを大まかに解説していきました。

 

グロインペインといってもその原因がどこからきているのかは多岐に渡り、その原因を突き止めて、的確に対処することが早期解決には欠かせませんよね。

 

グロインペインへのリハビリについては次回のコラムで取り上げていきたいと思います。

 

 

精読ありがとうございました。

リョーキ

 

 

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