ウエイトトレーニングがおこなえる環境が増え、日本でもアスリートだけでなく、幅広い世代でウエイトトレーニングに汗を流す方が多くなってきました。
これはジュニア世代(10代)にも当てはまることで、幼年期からウエイトトレーニングを練習に取り入れる光景を多く見るようになったように思います。
その一方で、トレーニングに関する色々な誤解や間違いもまだまだ氾濫しており、
特に子供のトレーニングに関しては、トレーニング自体にすら抵抗ある人が多いように思います。
そこで今回は、ジュニア世代のトレーニングについて,
効果、正しい知識、また実際にどのようなトレーニングをおこなったらいいの?
という疑問に、最新のスポーツ医学、トレーニング科学の理論を交えながら考えていきたいと思います。
まずPart Iでは、
子供のトレーニングに関して起こり得るありとあらゆる誤解を解消していきたいと思います。
レジスタンストレーニングとは?
まずレジスタンストレーニングとは何なのでしょうか?
レジスタンストレーニングとは一般的に体に負荷をかけたトレーニング方法の総称です。
俗にいうウエイトトレーニングや筋トレもレジスタンストレーニングのことで、
バーベルなどを使ったウエイトリフティングから自体重を使った腕立て伏せなどのトレーニングもレジスタンストレーニングに分類できます。
子供のレジスタンストレー二ングによくある誤解
①成長が止まる
②筋肉をつけすぎるとケガの原因となる
③本当に効果あるの?
誤解①筋トレをすると成長が止まる
未だに根強く残る考えだと思います。
現に、ジュニア世代でレジスタンスレーニングが敬遠される大きな理由が恐らくこの考えからきているのかもしれないですね。
では、本当にレジスタンスレーニングは子供の成長を止めてしまうのでしょうか?
実は、この説に関してはエビデンス的にみて何の根拠も無いのです。
アメリカのAmerican Academy of Pediatricsという団体が2008年に出したPosition Statementの中でも(Position Statementとは、エビデンスの塊で編み出された推奨している方針みたいなもの)
“正しくレジスタンスレーニングを行えば、発育に悪影響を与えることは無い”と述べています。
また、Lloyd et alが2014年に出したユースレジスタントトレーニングに関するInternational Position Statementでも、幼年期からのレジスタントトレーニングが成長に悪影響を与える説を否定しています。
両団体の言い分では、
”ウエイトトレーニングをはじめとしたレジスタンストレーニングは、幼年期の運動能力を養うのに不可欠な要素であり、その後の人生に置いても多くの利益をもたらすことが期待できる”とも述べています。
両団体ともむしろジュニア時代からのレジスタンストレーニングを推奨しています。
では、なぜ一部で筋トレが成長を止めると信じられているのでしょうか?
よく言われているのは、”筋トレをすると骨端線(成長に関わる軟骨の一部)を傷つける恐れがある”という考えでしょう。
元々、骨端線とというのは成長の進行と共に閉じていくのですが、レジスタンスレーニングが骨端線の閉口を早めるということはエビデンスレベルでは聞いたことがありません。
おそらく、骨折を引き起こすくらいの大きな負荷がかからない限り発生する可能性としては限りなく低いと言えるでしょう。
大事なのは、適切な負荷と量を正しいフォームでおこなうことです。
正しいフォームを無視し、むやみやたらに重いものを挙げようとしてもトレーニングの効果を得ることはできないです。
むしろ逆効果となってしまいます。
特に子供はまだ神経系機能が発展途上の段階で、フォームが安定していません。
その点でも指導者からの正しい指導が不可欠です。
誤解②ケガの原因となる
近年、たくさんのアスリートがレジスタンスレーニングを積極的に取り入れるようになってきたおかげで、どの競技においても昔と比べ身体的なパフォーマンスが飛躍的に向上したように思います。
しかし、中にはトレーニングが原因かはわかりませんが、故障する選手も増えてきているようで、必要以上にカラダをデカくすることに賛否両論の意見があるようです。
『ネガティブ意見の代表』
”あんなに体でかくしたからケガするんだよ”
”筋トレしてからよくケガするようになったね”
”使えない筋肉” など、、、、、、、
このことから、
筋トレ=筋肉がつく=ケガのリスクが上がる
というレジスタンスレーニングに対してネガティブな面ばかりみられがちです。
しかし、少し考えてみてください…………….
筋肉をつけることのみが果たしてトレーニングの目的なのでしょうか?
ボディビルダーの方で無い限り、トレーニングの目的ってパフォーマンスを向上すること、またケガのリスクを最小限に抑えることではないでしょうか?
レジスタンスレーニングに限らず、どのような練習も明確な目的とプランなしでは効率も悪いですし、もちろんケガのリスクも高くなります。
例えば、肩のトレーニングを例にとってみましょう。
機能的という面で考えてみると、肩で一番大切な筋肉はローテーターカフという肩関節を安定させる筋肉ですが、もしこの筋肉を無視して大きな筋肉ばかり鍛えているとどうなるでしょうか?
もしかしたら全般的な肩の機能が落ちて肩のけがを引き起こす原因となってしまうかもしれません。
自分自身、ボディビルダーや肩の筋肉がすごく発達した患者さんで肩があがらないというケースを多くみてきました。
個人的には、レジスタンスレーニングはもちろん他のトレーニングに関しても、正しくおこなえばケガを引き起こすのではなく、逆にケガから守ってくれる効果をもたらしてくれます。
(反対にやりすぎ、トレーニングエラーはどのトレーニングでも必ずケガを引き起こします。)
これは多くの研究からも証明されており、普段の練習にレジスタンストレーニングを取り入れることでケガの発生が15−50%まで下げることができるといわれています。
例えば、一般的に女子は男子に比べ膝の前十字靭帯をケガするリスクが1.6倍高いと言われていますが、
Heidt et alがおこなった研究では、普段の練習にレジスタントトレーニングを取り入れることでケガのリスクを劇的に減らすことができたと報告しています。
このように多くの研究でも、ケガの予防にウエイトトレーニングを中心としたレジスタンストレーニングの効果が証明されています。
誤解③本当に効果あるの?技術練習の方が大事!
ここで幼年期を大まかに定義したいと思います。
①幼小期(男子6−8歳、女子6−9歳)
②後期幼少期(男子10−13歳、女子9−11歳)
③青年期(男子14−18歳、女子12−18歳)
個人差などはありませすが、それぞれの年代で発達するカラダの機能も違いますし、それに合わせてトレーニングの目的も大きく変換していかなければなりません。
例えば、神経系が成人レベルに発達するのはだいたい8歳〜10歳といわれています。この期間では、より多くの動きを経験させることで基本的なアスレティックな能力を養うことが何よりも重要です。
それでは、トレーニングがこの発達段階にどのような効果を果たしてくれるのでしょうか。
実は、ウエイトトレーニングは神経系の発達を促進してくれる効果があり、神経系が発達する幼年期にウエイトトレーニングをはじめとしたレジスタントトレーニングを取り入れることによって、筋力、パワー、瞬発力、バランス、持久力などの能力を効果的に向上させることができると証明されています。
それでは技術練習のみでこのような効果を得ることはできないのでしょうか?
個人的な見解ですが、技術練習だけでは、総合的なアスレティックな能力、運動神経を養うことは難しいのではないかと思います。
なぜなら、技術練習では同じような動作の反復となりがちで、真のアスレティックな能力を養うことが難しいからです。
確かに技術を高めることは大切かもしれませんが、長期的な目でみてみてください。
パフォーマンスがピークに達して欲しいのは小学生、中学生、高校1、2年の頃でしょうか?ほとんどのアスリートが高校であれば最終学年、またその先の世界で輝くために練習していると思います。
神経系が発達する幼年期だからこそ、色々な動きを体感させ真のアスレティックな能力を養うことが重要ではないでしょうか。
ではなぜレジスタンストレーニングをジュニア時代からおこなうと良いのか、次回はトレーニングで期待できる色々なメリットを紹介していきたいと思います。
ご精読ありがとうございました。
