野球選手が利き肩に鞄をかけない理由

毎年夏が近づくに連れ、高校球児であった自分は、高校野球のシーズンが待ち遠しいものです。

 

さて、小、中、高、大学まで野球をさせてもらった、文字通り野球一筋の私ですが、

 

利き肩に鞄をかけるな!

 

と口酸っぱく指導者の方や選手から言われたものです。

 

肩に鞄をかけると肩を痛める。

 

そんな迷信じみた言葉を信じ込み、利き腕が右肩であった自分はいつも左側に鞄をかけていました……

 

 

実は、野球を経験したことがあるほとんどの方は同じような経験や指導をされてきたのではないでしょうか。

 

では、鞄を利き肩にかけると本当に肩を痛めてしまうのか?それとも、ただの迷信なのか?

 

 

少し検証していきたいと思います。

 

 

考えられる理由としては、

  • 神経の圧迫
  • 筋力の低下
  • トリガーポイントの刺激

 

 

神経の圧迫

考えられる理由としてはこれが一番ではないかなと自分では思います。

 

肩甲骨周りには色々な神経が通っています。

 

とくに肩甲上神経(Suprascapular nerve)はローテータカフの棘上筋、棘下筋を支配する大切な神経で、この神経は鞄をかけるあたりの下を通っている神経です。

 

 

例えば、この神経に過度の負荷がかかり圧迫された状態が続くと、

  • 筋力低下
  • 痺れ
  • 感覚の鈍化

などの症状などを呈することが考えられます。

 

特に肩甲上神経に支配されている棘上・棘下筋は肩関節の安定性を担う非常に大切な筋肉です。

 

これらが正常に働かなくなると肩の不安定性が増し、インピンジメント(肩関節の軟部組織が衝突し合う現象)、肩関節の筋バランスの崩れ、またそれに伴うパフォーマンスの低下などに繋がる恐れがあります。

 

ただ、これはあくまで考えられるリスクなので、相当な負荷がない限りまずはおこる確率は低いと思います。

 

肩甲上神経圧迫をテーマにした文献でも、これといったエビデンスは見つけることができませんでした。(1,2)

 

さて、もう一つ重要な腕神経叢(Brachial Plexus)と呼ばれる、C5からT1の神経で構成されている腕全体を支配する神経の塊が肩には通っています。

 

実は、先ほど紹介した肩甲上神経も腕神経叢の一部であります。

 

腕神経叢を痛める可能性があるとすれば、鞄をかけた時に肩が下に引っ張られ、その際に神経も一緒に牽引(ストレッチ)されることかと思います。

 

特に鞄を担いだ状態が長時間続くと僧帽筋の上部線維や首の斜角筋などが張った状態となりやすくなるため、腕神経叢、血管などを圧迫してしまい胸郭出口症候群(TOS)などを引き起こすことも考えられます。

 

 

筋力の低下

神経からくる筋力低下ももちろんですが、単に疲労から筋力低下も十分考えられます。

 

長時間片方に鞄を担いだ後に腕が疲れたという経験をされた方は多くいらっしゃると思います。

 

それもそのはず、鞄を担いでいる状態では肩を挙上する筋肉の僧帽筋や首の筋肉を常に働かせた状態(アイソメトリック)にしているため肩周りが疲れるのも無理はありません。

 

ただ、もしかしたらこの肩のだるさは神経的なものからきているかもしれません。

 

こればかりはどちらが原因で筋力低下しているのか突き詰めるのは難しいところです。

 

どちらが原因にしろ、筋力の低下が肩の不安定性を引き起こしたり、キネマティクスを変えてしまい肩障害の元凶となってしまうので、筋力の低下に繋がる行為は避けた方がいいことは間違いありません。

 

 

トリガーポイントへの刺激

さて、トリガーポイントと聞いて筋をリラックスさせるものと思い浮かべる人は多いのではないでしょうか?

 

実際、筋肉の張りに対して関連したトリガーポイントを刺激するトリガーポイントリリースは臨床でもよくおこなう手技の一つです。

 

ただ、トリガーポイントにも多くの分類が存在し、関連痛(Referred Pain)を引き起こすものから、刺激した時にだけ痛みが伴うもの、あるいは他の筋肉まで派生するトリガーポイントまで様々に存在しています。(3)

 

特に肩には多くのトリガーポイントが存在し、これが過度に刺激されることで肩に痛みがでたり、筋出力を低下させてしまう可能性もあります。

 

 

 

さて、今回はあくまで考えられるリスクを紹介させていただきました。

 

実際にこれがおこるのかと言われると確率としては低いと思いますし、鞄を担ぐと肩を痛めるというのはエビデンスレベルからいうとピラミッドの一番下くらいのレベルだと思います。

 

 

 

ただ、ご紹介した通りリスクがあるということは確かではあるので、肩を痛めることに繋がる行為はいずれにせよ慎んだ方がいいということは間違いないと思います。

 

では、今回はこのへんで

 

References

1. Suprascapular nerve entrapment: experience with 28 cases. from https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8929490

2. Suprascapular neuropathy. Variability in the diagnosis, treatment, and outcome from https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11347826

3. Trigger Point, Physiopedia from https://www.physio-pedia.com/Trigger_Points

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