こんにちは。
先日ニュースにて、日本サッカー界の至宝 久保建英選手が半月板を損傷した疑いがあるという記事を見ました。久保選手には一日も早い回復を祈るばかりです。
さて、膝の半月板の怪我は膝の怪我の中でもよく耳にする用語ではないでしょうか?
実は半月板損傷はスポーツに限らず日常でも頻繁に起こり得る怪我であるということをご存知でしょうか?
そこで今回は、身近にも起こり得る膝の半月板損傷について解説していこうと思います。
半月板の解剖学101

まず余談となりますが、半月板は英語でMeniscusと言います。実はMeniscusという単語は元来ギリシャ語のMeniskosからきているらしいとか………..
さて余談はこの辺としておき、はじめに半月板とはどのような組織であるのかを見ていきましょう。
半月板は膝の関節にある軟部組織で、内側と外側の2パートで構成されています。ただ、内側半月板と外側半月板とでは形状や機能などが少しずつ異なっています。
まず、内側半月板ですが、”C shape”と言われるようにアルファベットのCに似たような形状をしています。
また、内側半月板(Medial Meniscus:MM)が外側半月板(Lateral Meniscus:LM)と異なる部分としては可動性が制限されている点が挙げられます。LMが前後に10〜12 mm程可動性があるのに対して、MMは前後におおよそ5 mm程度しか可動性がありません。
この理由として、MMはハムストリングや内側側副靱帯(MCL)などの組織が付着しているからであり、これにより動きが制限されてしまいます。その一方で、LLには膝窩筋という小さな筋肉が付着しているくらいなので、MMと比べてある程度の可動性がもたらされています。
またLMの形状は”O shape”といいアルファベットのO型の形状をしており、内側と比べて比較的小さくもあります。
この点で、MMと比べて可動性が大きくなっているのかもしれませんね。
次に、内側と外側を怪我のしやすさの観点で見てみましょう。
統計上でほとんど大差はないようですが、MMが40%前後に対して、LMは60%前後と少し高くなっています。
さて、この膝の半月板はスポーツニュースなどを見ていると頻繁に耳にする用語ですが、どのような機能を果たしてくれているのでしょうか?
ここからは、半月板の機能について見ていきたいと思います。
半月板機能
半月板の主な働きとしては、
- 膝の安定性を保つ
- 膝にかかる荷重を分散してくれている
- ショックアブソーバーとして働いてくれている
- 滑らかな膝が動くように油のような働きを持たせる
などがあります。
まず、半月板は膝の安定性に非常に重要な役割を果たしてくれています。
半月板があるおかげで関節の適合性が上がりスムーズな動きをさせてくれています。
もし半月板がないと、膝にかかるストレスがうまく分散されず、ある一定の場所に多くのストレスがかかってしまいます。
これが蓄積することで将来的に変形症を引き起こす原因となってしまうかもしれません。
このように半月板があるおかげによって関節の適合性が上がり、衝撃を均等に分散してくれているおかげにより膝にかかる衝撃から守ってくれています。
例えば、歩くなどの日常の何気無い動作もこの半月板のおかげによって膝にかかる衝撃がおよそ20%も緩和されているのです。
また、半月板の他の機能として関節の油のような役割を果たしてくれています。
この油のような効果はとっても重要で、この油の働きのおかげによって関節で生じる摩擦が軽減されているのです。
例えば、半月板があるとないとでは、何倍以上も膝関節にかかるストレスが変わってきます。
このストレスが蓄積することで将来的にOsteoarthrisis(関節変形症)という関節自体の変形につながっていく可能性も高くなっていきます。
損傷のメカニズム

さて、非常に大切な役割を果たしてくれている半月板ですが、どのように損傷してしまうのでしょうか?
怪我のメカニズムは色々とありますが、まずアクシデントなどで起こる急性のケースと長年の損傷が蓄積して起こる慢性なケースに大きく分けることができます。
急性の場合はスポーツ中に起こる怪我が多いようです。
ラグビー、サッカーなどの急な切り返しやターンはただでさえ膝に大きなストレスを与えます。
疲労などで膝の安定機構が機能していない時にこのような大きなストレスが加わるのはかなりのリスクとなるでしょう。
また、半月板のケガはよく膝の前十字靭帯と付随して起こります。
さらに言えば、前十字靭帯損傷のある膝では、その後になって半月板の損傷を併発するリスクもあります。
この理由としては膝の安定性が失うことでより大きなストレスが半月板にかかるようになるからです。
慢性な場合では、年齢が大きな影響を与えます。
これは統計的に見てみても、40歳以上の年代で半月板損傷のリスクが高くなっていることからも実証されています。
この理由として、半月板は筋肉などの組織と同様に年齢と共に水分量が減少するため、段々と弾力性を失っていきます。
これによって膝への小さな衝撃でも半月板の損傷に繋がってしまう恐れがあるからです。
また、半月板は一度損傷してしまうと、自然治癒しにくい組織でもあります。この理由としては、半月板は非常に血液の供給が乏しい組織であり、修復に必要な栄養素を十分に受け取ることができないため自己再生がおこりにくいからです。
急性の場合と同様にスポーツ中でおこる怪我はもちろん、高齢になってくると日常生活においても半月板損傷のリスクが高くなっていきます。
例えば、膝をついて作業をするような動作(Kneeling)や深くしゃがみこむスクワットのような動作は半月板へストレスが大きくかかる動作でもあります。
また、階段の昇り降りを頻繁にする動作も半月板にストレスが大きくかかる動作ですので、このような動作によって半月板を損傷させてしまう恐れがあります。
診断
それでは、どのような症状がある場合に半月板損傷を疑ったほうが良いのでしょうか?
膝の痛みといっても他の組織を痛めている可能性もありますので、できる限り正確な診断が必要です。
特に膝は複雑な組織なので判断が難しい部位でもあります。
他の膝の傷害と見分ける指標として以下の3点が助けとなるかもしれません。
- Joint Tenderness(関節の圧痛)
- Swelling(腫れ)
- Feeling ”Catching” and ” Locking”(キャッチングやロッキング)
この中で腫れ(Swelling) は他の膝の傷害でも現れる特徴なので、膝が腫れているからといって半月板を損傷しているとは断定できません。
その一方で、Joint Tenderness や特に”Catching”や”Locking”といった症状は半月板損傷でよくみられる症状です。
もし、このような症状がある場合は医療機関で受診を受けてMRIなどの画像で確認を取ることをお勧めいたします。
現在のMRIの精度が大体70〜98%くらいなので、半月板損傷の診断には臨床での評価と併せてMRIを撮るのが一番確実な方法であると言えるでしょう。
治療オプション
さて、半月板に対する現在の治療法ですが、これは、損傷箇所によっても大きく異なってきます。
例えば、損傷が血液供給がある箇所にあるならば、自然治癒の可能性もあるのでまずは理学療法などの保存療法を試みる場合も考えられます。
一方で、半月板の損傷が自己再生しにくい場所にある場合や理学療法によっても改善が見られないようならば最終的にドクターと患者さんとの判断により手術に踏み切るといった流れとなるでしょう。
手術
手術方法ですが、Meniscus Repair(修復)か部分的に除去するMeniscectomy(部分除去) が主な半月板損傷に対する手術方法となっているようです。
どちらの手術も長所と短所あり、どちらが良いかの議論は僕のスコープを超えた部分になるのでこのブログでは触れませんが、
一昔前と違うのは半月板の完全除去はほとんどおこなわれないようになってきているようです。
この理由として、半月板の機能の重要性が強調されてきている背景が関係しています。
半月板の機能でも説明しましたが、半月板は膝の安定機構に非常に重要な役割を果たしてくれています。
ある研究によると、15%〜30%半月板が失くなるだけで膝へのストレスが4倍も上がるということがわかっています。
半月板が少し失くなるだけでこんなにも膝への衝撃が増えるのですから、将来的に膝変形症(OA)を引き起こすリスクも高くなるでしょう。
また、半月板にはメカノレセプターと言われるセンサーが多く存在する組織でもあります。実はこのセンサーがあるおかげによって膝が正常な働きをする助けとなってくれているのです。
こんなにも重要な働きを担っている半月板、仮に少しでも無くなってしまうとその分大きなリスクに繋がるというのが分かりますね。
さて、手術にしろ保存療法にしろ、機能回復にはリハビリテーションが欠かせませんよね。
次回のブログでは膝の半月板に対するリハビリテーションに焦点を当てていきたいと思います。
それでは、また次回
