肩シリーズ:五十肩の対処法

 

年齢と共に変化が現れてくるのは人間として仕方のないことですが、体の変化が起こるのは外見だけではないですよね。

 

体力の低下、以前は平気だった運動ができなくなったり、少しの運動で体の節々に痛みが出るようになってきたり、年と共に自分の体の変化をヒシヒシと感じるようになってくるかもしれません。

 

特に、肩の痛みは日常生活でも頻繁に起こるケガとして多くの方が一度は経験されてきたのではないでしょうか。

 

これは日常生活で常に肩を使い続ける限り仕方のないことかもしれませんが、肩に痛みなどがあると決まって、”四十肩、五十肩”というフレーズが出てきます。

 

もちろんこれは少し冗談めいて使っているだけかもしれませんが、実は本当に五十肩の可能性もあるので早期発見とそれに対する対処療法、またトレーニングが症状改善には欠かせません。

 

今回は日常でもおこりえる五十肩に対して自宅でも簡単におこなえるトレーニングをご紹介していきたいと思います。

 

 

五十肩って何?

まず五十肩って何なのでしょうか?

 

実はハッキリと言って”これが五十肩だ”というような定義はありません。

 

肩にはっきりとした損傷がない + これと言った診断名が思い浮かばない + 五十肩特有の症状を呈している

 

これらを前提に五十肩なんじゃないかな〜という診断を下しています。

 

五十肩を引き起こす原因は無数に存在しますが、これも結果的に五十肩の発症につながった、と捉えた方が良いかもしれません。

 

ちなみに五十肩を英語では、FROZEN SHOULDER(正確な医療用語ではADHESIVE CAPSULITISと呼びます。直訳すると”凍結肩”….Frozen Shoulder最大の特徴が可動域低下(Decreased ROM)ので、何とも直球どストレートな表現です。

 

 

原因

先ほども述べたように五十肩を誘発する原因は多岐に渡ります。そして、なぜ五十肩を発生するかは完全には解明されていません。

 

ただ、大きな原因の一つとしては、炎症反応の異常が五十肩を引き起こすのではないかといわれています。

 

五十肩をもつ人の特徴として炎症反応の指標であるサイトカインレベルが異常に高いことが研究などで認められています。

 

サイトカインとは炎症過程で分泌される物質であり、細胞の修復過程にはなくてはならない存在です。しかし、この状態が長い間続くと、余分なFibrosis(線維化)が促進されてしまうため、肩関節がガチガチになって固まってしまい、本来の可動性を失っていきます。

 

このように炎症反応の異常が原因となり組織の癒着を引き起こしてしまい、五十肩発症につながるのではないかと言われています。

 

 

リスク要因

五十肩を発症させるリスク要因も無数に渡りますが、以下の要因が特に危険因子となる可能性が高いです。

  • 年齢
  • 過去におこった肩の傷害
  • 糖尿病
  • 甲状腺障害

 

年齢

五十肩を発生する頻度が高い年齢層というものがあり、五十肩は40−65歳の年代で起こりやすいと言われています。五十肩とはまさに発生頻度が高い年齢を的確に表現したものであるということが面白い部分ですね。

 

肩の障害

過度の炎症反応が五十肩を引き起こす原因となるとお伝えしたように、もともと肩に何らかのケガがあったことで、関節に慢性的な炎症が起こったということも考えられます。

五十肩は他の肩障害と併発・もしくわその後遺症として発生することが多いので、過去に肩に大きな怪我を経験したことがある人は五十肩のリスクが高いともいえます。

 

糖尿病

どのような関連性があるかは完全には解明されていませんが、糖尿病持ちの方は発症のリスクがかなり高くなります

 

なぜ、糖尿病が五十肩を引き起こすリスクを高めるのかは詳しく解明されていませんが、糖尿病は五十肩だけでなく他の炎症ベースの疾患(リウマチなど)のリスク要因でもあります。

 

もしかしたら、糖尿病自体に何か過度の炎症を促進する、または炎症からの回復を遅延させるメカニズムがあるのかもしれません。

 

甲状腺障害

甲状腺に異常があると代謝機構に異常が生じます。糖尿病にも当てはまりますが、代謝機構に異常があると五十肩を引き起こすリスクが高まるということがこれまでの研究からも解明されています。

 

ただ、これもどのようなメカニズムで五十肩を発症するかは詳しく解明されていません。

 

 

症状

さて、診断も難しい漠然としたコンセプトの五十肩ですが、一体どのような症状があると五十肩である可能性が高いのでしょうか。

 

実際にエビデンスベースでいわれる五十肩の症状とは以下の通りです。

 

  1. 可動範囲の低下が多面にておこる
  2. 痛み
  3. スティフネス(こわばり、凝り)

 

 

可動範囲の低下が多面にておこる

これが、五十肩の最大の特徴とも言えます。

 

まず、人間の動きを細かく分けると、3つの面(3D)に分類することができます。そしてこの3つの面でおこる運動では使われる筋肉や動きに関連する組織も変わってきます。

 

Planes of Motion: Sagittal, Frontal, Transverse - Physique Development

 

例えば、肩の挙上(Elevation)と言っても実際に前方向にあげる屈曲(Flexion)と横にあげる外転(Abduction)とでは、動きに関与する筋肉も異なってきます。

 

ちなに屈曲という動きは矢状面 (Sagital plane) という面上でおこなわれる運動であり、一方で外転は前額面 (Frontal plane) という面上でおこなわれる運動です。

 

五十肩ではこの可動域の制限が多面にておこるため、肩を動かすことができる範囲が大きく制限されてしまいます。

 

特に五十肩の大きな特徴として、肩を外に回旋させる動きの外旋(水平面上でおこる運動)という動きが著しく制限されてしまうのですが、この外旋という動きが制限されてしまうことで、例えば衣服を着たり、物をとるときに腕を伸ばす動作などが困難になる恐れがあります。

 

痛み

次に五十肩の大きな特徴として、肩の痛みが伴います。ただこの痛みには他の肩の障害と少し異なった特徴があります。

 

五十肩は症状の度合いによって大きく3つの段階に分けることができ、その各段階によって痛みの度合いが異なってきます。

 

まずPhase 1では、痛みが最もひどい状態で、肩を動かさなくても痛むことがあります。また、夜間に痛みが激しくなり、通常の睡眠をおこなうことも困難となります。

 

そしてPhase2では痛みがピークを迎え、徐々に収まってきます。肩を動かさないような安静状態では痛みがおこることはほとんどありません。肩を最終可動域まで動かした時に痛みが伴います。

 

最後にPhase 3ですが、実はPhase 3では肩の痛みはほとんどありません。この段階では痛みよりも逆に肩のスティフネスがはげしくなるのが特徴で、肩の可動域が著しく制限されてしまい、背中に腕を回すことや腕を頭の上にあげるなどの動きが大変困難となります。

 

スティフネス

うまく日本語に直すと、“硬直・こわばり・凝り” とでもいうのでしょうか。関節内外の軟部組織が硬直することで可動域が著しく制限されます。

 

炎症反応の異常により、過度の瘢痕化(Fibrosis)が進行することで関節自体が硬化してしまい、肩の可動域が著しく制限されてしまいます。

 

治療法

さて、ここからはその五十肩にどのような治療法が有効とされているのか、最新のエビデンスに基づいて見ていきましょう。

 

  • ステロイド注射
  • マニピュレーション
  • 手術
  • 理学療法

 

上記の内3つは医学的な介入がないとどうしようもないので、適切な診察と医師への相談が必要となります。

というわけで、このブログでは簡単な説明のみとさせていただきます。

 

ステロイド注射

ステロイドといっても筋肉を増強するアナボリックステロイドではございません。ここでは炎症を抑えるコルチコステロイド(通称コルチゾンショット)のことをさします。

 

コルチコステロイドは関節の炎症を抑える作用があるので、肩で発生している炎症への効果が期待できます。

 

マニピュレーション

ありとあらゆる手を尽くして最終手段とでもいうのでしょうか。

 

実際に麻酔をかけた状態で硬化しきった肩を思っ切り最終可動域まで動かします。

 

もちろん術中は麻酔状態なので何も感じることはないでしょうが、麻酔が切れると数日はかなりの痛みが伴うことがあります。

 

実際に自分もマニピュレーションをおこなった患者を数名みてきましたが、術後の数日間はかなり悲惨な状態でした…….

 

ただ、痛みが治ってくると五十肩の症状も改善してくるのと、エビデンスレベルでも実証されている手法なので、最終手段(last resort)として頭の片隅に置いておくのも良いかもしれません。

 

手術

マニピュレーションも手術に分類されますが、実際に関節鏡視下を使い関節包をリリースする術法もあります。マニピュレーションと関節鏡視下を併用することも多いらしく、予後の痛み・肩の機能面改善に関して一定の効果があるようです。

 

理学療法

さて、上記の3つは医学的な介入がないとおこなうことができませんが、理学療法に関しては最も身近におこなうことができます。

 

そして実は、理学療法こそが五十肩に最も効果的な治療法でもあるのです。

 

それでは、どのような治療方法が症状改善に効果的なのでしょうか。

 

実は、ストレッチが最も効果的な方法なんです。

 

ストレッチであれば特に治療院や病院などに行かずとも、また高価な治療器具などを用いずとも身近におこなうことができますよね。

 

動画の方でも自宅で簡単におこなえるストレッチのテクニックをご紹介しておりますので是非参考にしてください。

 

まとめ

五十肩の最大の原因は肩を動かさないことです。

 

よくある例としては、

 

肩の怪我が原因で腕を動かさない状態が続く

関節内で癒着が徐々に進行してしまう

肩関節の可動域が低下していく。

 

 

そして、この動かさない状態(Immobilization)は癒着を促進するだけでなく、筋肉の血流を滞らせてしまうので細胞環境にもどんどん悪影響を与えていきます。

 

この結果、痛みがますます進行してしまい、さらに腕を動かさなくなるといった負の連鎖に陥ってしまいます。

 

痛みがある場合、腕を動かすことすら辛いでしょうが、ある程度痛みがコントロールされてきたら今回ご紹介したテクニックを積極的におこなってみてください。

 

また、痛みがある場合でも、実際に軽い運動をおこなうことで血流が改善され痛みが軽減する場合もあります。

 

まずは、自分の体と相談しながら無理のない範囲で試してみることをおすすめいたします。

 

 

今回の件で質問などあれば、気軽にコメントお願いします。

 

それでは精読いただきありがとうございました。

 

リョーキ

 

参考文献:References

  • Hanchard, N. et. al. (2011) Evidence-based clinical guidelines for the diagnosis, assessment and physiotherapy management of contracted (frozen) shoulder. V.1.7, ‘Standard’ physiotherapy. Endorsed by the Chartered Society of Physiotherapy.
  • Evidence-based clinical guidelines for the diagnosis, assessment and physiotherapy management of contracted (frozen) shoulder: quick reference summary
  • Kelly et al. (2009) Frozen Shoulder: Evidence and a Proposed Model Guiding Rehabilitation
  • Redler et al. (2019) Treatment of Adhesive Capsulitis of the Shoulder
  • CPG: Shoulder Pain and Mobility Deficits: Adhesive Capsulitis

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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