負荷をかけないで筋肥大!?魔法のようなトレーニングBlood Flow Restriction (加圧トレーニング)

 

みなさん、今アメリカのスポーツリハビリテーションで革命的なことがおこっているのをご存知でしょうか?

 

従来的に、怪我の直後や手術後のある一定期間は重い負荷を用いたトレーニングができないため、ある程度の筋力低下・筋肉の萎縮がおこるというどうしようもないジレンマがありました。

 

しかし、2010年代くらいからリハビリテーションにこのジレンマに終止符を打つかのごとく救世主が現れたのです。

 

それが、Blood Flow Restriction (BFR)

 

実はこのBFR、日本でいうと加圧トレーニングのことをさします。

 

もしトレーニング業界に詳しい方であれば、

 

”あれ?加圧トレーニングって日本ではもっと先に流行っていなかったけ?”

 

と疑問に持つ方も多いかと思います。

 

それもそのはず、

 

このBFRとは、日本の加圧トレーニングが本家本元であり、それをリハビリテーションに応用したに過ぎないからです。

 

この理由から、BFRに関する研究のほとんどは日本でおこなわれたのものであり、まさに日本が生み出した世界に誇るトレーニングメソッドの一つと言っても過言はないでしょう。

 

ただし、日本では加圧トレーニングをリハビリテーションというよりは、どちらかというとダイエットなど違う用途として使用されているようです。

 

ちょうど自分が大学の頃、加圧トレーニングという用語を耳にして、

 

”へぇー、こんなトレーニングもあるんだ〜”

 

と、特に気にも留めていなかったトレーニング方法ですが、最近ではリハビリテーションに応用されるようになってきたことでより身近に感じるようになってきました。

 

それでもやはり、加圧トレーニングの効果と安全性、またそれ以前にどのように使えば良いのか不明な部分が多いと思います。

 

そこで今回は、まだまだ謎が多いBFRについて以下の点について説明していきたいと思います。

①どのようなトレーニングなのか?

②どのような効果があるのか?

③どういった時に使うと効果があるか?

④使用方法

⑤安全性

 

 

BFRとは?

 

 

Blood Flow Restriction (BFR)とは、血流の静脈の流れを制限することで筋肉を低酸素状態にし、より軽い負荷で筋肥大を可能にするトレーニングメソッドの一つです(感覚的にはパンプアップに似た感覚)【1,2】

 

まずはじめに、BFRでなぜ筋肥大がおこるのか?という本題に入る前に、筋肥大のメカニズムからおさらいしましょう。

 

従来の筋肥大をさせるトレーニング方法では、高重量を使ったウエイトトレーニングによって筋に微細な損傷を与えることで筋繊維を少しづつ成長させていくという ”オーバーロード(Oveload)” の原則が一般的でした。

 

この従来の筋肥大に焦点を絞ったトレーニングでは、筋肉にかける負荷として65%(1RM)以上の高負荷をかけないと筋肥大の効果が得ることが難しいと言われています。

 

では、BFRを使うとどのようにこの筋肥大のメカニズムに革命を起こすことができているのでしょうか?

 

実はBFRでは、この筋肉にかけてあげる負荷が20%〜30%程度でも筋肥大の効果を得ることが可能と言われています。【3,4,5,6】

 

要するに、従来の高強度の負荷をかけなくてもBFRを使うことによって軽い負荷で筋肥大させることが可能になるということです。

 

例えば、ベンチプレスの1RMが100kgだったとしましょう。

 

従来のウエイトトレーニングで筋肥大をおこそうとすると、おおよそ65kg以上の負荷をある程度の回数こなす必要があります。

 

ここでBFRを使うと、20kgの負荷でも筋肥大を得ることが期待できるということになります。

 

これはもう何か魔法のような方法ですね。

 

 

どのような効果があるのか

でも、どのようなメカニズムで筋肥大がおこっているのでしょうか?

 

筋肥大の主要なメカニズムとしては大きく分けて2つの説があります。

  • Mechanical Tension:メカニカルテンション
  • Metabolic Stress:メタボリックストレス

 

Mechanical Tension:メカニカルテンション

まずMechanical Tension(メカニカルテンション)とは、大きな負荷を筋肉にかけることで筋繊維にマイクロなダメージを与え筋繊維を徐々に成長させていく方法です。【7】

 

先ほども述べたように、慣習的なウエイトトレーニングによる筋肥大はこのメカニカルテンションによって筋肥大の効果を得ていると言われています。

 

 

 

Metabolic Stress;メタボリックストレス

もう一つの筋肥大を引き起こすメカニズムはメタボリックストレスといい、体内環境を筋肥大に適した環境に整えることで筋肥大を誘発する方法です。【8,9】

 

実際に体の中でどういうことがおきるのかというと、

 

  • 血中ホルモンの上昇:elevated systemic hormone
  • 速筋線維リクルーメント:Fast twitch fiber recruitment
  • 細胞膨張:cell swellingなど体内でマクロな変化がおこる

 

実は、BFRの筋肥大はこのメタボリックストレスからの恩恵ではないかという説が強いです。

 

確かに、20%くらいの負荷では筋繊維にマクロなダメージは与えることは難しいですよね。

 

それにBFRのように、たとえ筋細胞を低酸素状態にしたからといっても筋にかかる負荷が増えるわけではないです………

ということは、メカニカルテンションによる筋肥大効果はあまり期待できないのではないかと思います。

 

逆にメタボリックストレスは筋肉を低酸素状態にすることでも引き起こすことができますので、BFRは理にかなった方法かもしれません。

 

これが20%の負荷でも筋肥大をおこすことを可能にしているメカニズムというわけですね。

 

 

どういった時に使うと効果があるか

BFRが画期的なトレーニングであることは、なんとなくわかってきたかと思います。

 

それでは、BFRをどのようにトレーニングに取り入れていけばより良い効果が得られるのでしょうか?

 

まず一番のメリットは何と言っても、高重量の負荷をかけずとも筋肥大させることが期待できるという点です。

 

リハビリでよく使う例としては、手術後や怪我直後の比較的リハビリテーション初期段階で重い負荷をかけられない時に用いたりします。

 

これによって筋萎縮を防ぐことが可能となります。

 

また、リハビリである程度のトレーニングが可能となって来た時に、BFRをウエイトトレーニングなどと併用したりします。

 

こうすることで低重量によっても筋肥大を引き起こすことが期待できるので、リハビリをより円滑に進めることが可能となります。

 

特にACLや半月板の術後3−4ヶ月あたりで、荷重トレーニングが可能になったけどまだ重い負荷をかけることができない時などにBFRを使用すると、筋萎縮防止や筋肥大という観点からとても大きな助けとなります。

 

つまり、最適なタイミングとしては

 

リハビリ初期に筋萎縮を防ぎたいとき

 

② 荷重をかけたトレーニングが可能になり、効果的に筋力アップをさせたいとき

 

 

デメリット

ただし魔法のようなBFRにもデメリットな面もあります。

 

確かに重い負荷をかけなくても筋肥大させることができる画期的なトレーニングなら普段からのウエイトトレーニングも加圧トレーニング+低重量で筋肥大させればいいんじゃないかと思います。

 

残念ながら、私たちの体はそのようにうまくは作られていないのです。

 

筋肥大には2つのメカニズムがあると紹介したのを覚えているでしょうか?

 

実はメカニカルテンションで得られる効果というのはパフォーマンスにとってとてつもなく大事な要素となります。

 

このメカニカルテンションで得られるアドバンテージがBFRでは実はそれほど期待できないと言われています。

 

それでは、なぜメカニカルテンションを与えることが大切なのでしょうか?

 

実は、高重量でのトレーニングをおこなうことでいち早く神経系の適応を促進することができると言われています。

 

例えば、トレーニング始めたての頃に、”筋肥大がおきるにはまだ日が浅すぎる、なのに前回のトレーニングよりも重い重量を挙げれるようになった” という経験をお持ちの方はいないでしょうか?

 

これはほとんどの場合ですが、神経伝達速度の改善やモーターユニット(筋肉を支配する運動神経の数)がより多く動員されるようになった恩恵といわれています。

 

つまり、”慣例的な高重量トレーニングで得られる神経系の発達がBFRではなかなか得ることが難しい”ということが最大のデメリットかもしれません。

 

トレーニングを積んでいない被験者を対象にBFRの効果を調べた研究で、トレーニング前とBFRトレーニング後とでは筋発揮に差異がなかったという研究結果もあります。

 

これは、BFRによって慣習的なウエイトトレーニングで得られる神経系の改善、筋力向上などの効果を得ることが難しいということを示唆しているのかもしれません。

 

 

確かにBFRはメタボリックストレスによる筋肥大を引き起こすことができるトレーニング方法ですが、神経系を発達させるには不向きであるかもしれません。

 

このことからも、やはりパフォーマンスの向上には慣習的な高重量のトレーニングはパフォーマンス向上には不可欠です。

 

 

トレーニングメソッド

 

BFRトレーニングでは、基本的にハイレップ・ショートインターバルのプロトコルが文献で推奨されています。

 

①プロトコル

具体的な例としてはトリプル3といい、30回、30秒インターバル、3セットおこなう方法や、30ー15ー15ー15repを30−45秒のインターバルでおこなう方法など、リハビリ段階やフィトネスレベル、個人のゴールなどに合わせて調整していきます。【10】

ただ、何れにしても低酸素状態に持っていくために高回数を短いインターバルでおこなう必要があります。

 

②負荷設定

次にBFRの負荷設定に関してですが、大体の文献で最大挙上重量の20%−35%1RMがスタンダードとなっているようですが、これも状態に応じて調整していって問題ないと思います。【5,6】

 

ただ、正しいフォームで推奨されている量のトレーニングをこなすことが大事ですので、むやみやたらに重量を増やせばいいというわけではないです。

 

実際に使用してみるとわかると思うのですが、20%強度でもかなりしんどいです。

 

もし強度が足りないと感じる場合は強度を上げる前に今一度フォームやトレーニング方法をチェックしてみてください。

 

BFRのデメリットの面で、神経系の発達には不向きと述べましたが、トレーニング方法の工夫によっては神経系の発達にも有効かもしれません。

 

これは個人的な見解なんですが、BFRをプライオメトリクスをはじめとした神経系トレーニングなどに取り入れてみると面白かもしれませんね。

 

安全性

BFRですが、基本的に静脈の流れを制限するために安全面に関しては、それほどリスクは高くないと言われています。

 

しかし、使用に関しては使用が禁忌な方(例えば、深部静脈血栓症(DVT)など)もいますので必ず専門家の方に相談してください。

 

最後に、どのように血流を制限するか関してですが、血圧計測時でみかける血圧測定用カフで圧力を設定します。

測定には機械を使用し、自動的に設定してくれる方法と手動で計測する方法とがあります。

 

機械の場合、自動的に静脈還流を制限する圧を測定してくれるので手間がいらず簡単に使用できますが、機械自体すごく高価なので、中々一般の手に入ることは難しいというデメリットがあります。

 

逆に手動でおこなう方法は測定する手間などがありますが、機械よりも安く手に入るので多くのクリニックやジムで幅広く使用されているようです。

 

手動を使用する場合、かける圧に関しては、上肢と下肢で違いはありますが、大体160−230mmHgの間の圧が推奨されています。

 

より安全に使用するためにはドプラーという超音波を使用することが推奨されています。【11】

 

ドプラーを使用する場合は、後脛骨動脈から脈拍音を拾い、脈拍音が拾えなくなった圧を100%としてそこから80%の圧が動脈の流れを制限せず尚且つ静脈還流を制限できる圧となるようです。

 

例えば240mmHgで脈拍音が聞こえなくなった場合、240x0.8=160mmHgの圧を使用します。

 

 

 

まとめ

 

①BFRを使うタイミングとしては術後やケガからの復帰で高重量のトレーニングがおこなえない時が適してる

 

②比較的簡単に使用することができるので、リハビリやトレーニング時に併用することでより効率的に筋肥大などの効果を得ることができる

 

今回の記事でコメントなどあればお気軽にメッセージください。

 

最後までお付き合いありがとうございました。

アオキリョーキ

 

References

  1. Takarada Y, Takazawa H, Sato Y et al. Effects of resistance exercise combinedwith moderate vascular occlusion on muscular function in humans. J Appl Physiol2000; 88(6):2097–2106.
  2. Yasuda T, Ogasawara R, Sakamaki M et al. Relationship between limb andtrunk muscle hypertrophy following high-intensity resistance training andblood flow-restricted low-intensity resistance training. Clin Physiol Funct Imag-ing 2011; 31(5):347–351.
  3. ACSM. American College of Sports Medicine position stand: progression mod-els in resistance training for healthy adults. Med Sci Sports Exerc 2009;41(3):687–708.
  4. Kraemer WJ, Marchitelli L, Gordon SE, et al. Hormonal and growth factor responses to heavy resistance exercise protocols. J Appl Physiol. 1990;69(4):1442–50.
  5. Takarada Y, Sato Y, Ishii N. Effects of resistance exercise combined with vas-cular occlusion on muscle function in athletes. Eur J Appl Physiol 2002; 86(4):308–314.26.
  6. Manimmanakorn A, Hamlin MJ, Ross JJ et al. Effects of low-load resistance train-ing combined with blood flow restriction or hypoxia on muscle function andperformance in netball athletes. J Sci Med Sport 2013; 16(4):337–342.27
  7. Goldberg AL, Etlinger JD, Goldspink DF, et al. Mechanism of work-induced hypertrophy of skeletal muscle. Med Sci Sports. 1975;7(3):185–98.
  8. Takada S, Okita K, Suga T, et al. Low-intensity exercise can increase muscle mass and strength proportionally to enhanced metabolic stress under ischemic conditions. J Appl Physiol. 2012;113(2):199–205.
  9. Pope ZK, Willardson JM, Schoenfeld BJ. A brief review: exercise and blood flow restriction. J Strength Cond Res. 2013;27(10):2914–26.
  10. Yamanaka T, Farley RS, Caputo JL. Occlusion training increases muscular strengthin division IA football players. J Strength Cond Res 2012; 26(9):2523–2529.
  11. Park S, Kim JK, Choi HM et al. Increase in maximal oxygen uptake following2-week walk training with blood flow occlusion in athletes. Eur J Appl Physiol2010; 109(4):591–600.

 

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