
私がまだ学生の頃、よく選手たちの間でこんな言葉が出回っていました。
”ミートグッバイ”
スポーツをされてきた方は、もしかしたら聞き覚えのある言葉かもしれませんね。
実は、ミートグッバイとは肉離れを少し洒落た感じに呼んだ医療単語?のことなんです…….今考えると、ひどい名前ですよね。笑……….
ちなみに英語ではHamstrings Strainと言います。(アメリカ人にはミートグッバイはきっと通じません。)
実はこの肉離れ、どのスポーツでも頻繁に起こりうる怪我の一つなんです。
特にサッカー、ラグビー、アメリカンフットボールといった走るスポーツで頻繁におこるケガですが、野球も例外ではなく肉離れはシーズン中に最も頻繁に起こるケガの一つでもあります。
では肉離れといっても実は軽度のものから重度のものまでと重症度も異なり、症状なども違ってきます。
例えば、軽度の場合では走った時に痛みや違和感があるといった比較的軽い症状におさまる一方で重度の場合では最悪断裂しているケースもあり、歩行なども困難となってきます。
皆さんは肉離れと聞くとまずどのような状態を想像しますか?
もしかしたら肉離れだから筋肉が真ん中から”ブチっ”とちぎれるみたいな様子を想像するかもしれませんね、、、、、しかし、実際には肉離れで筋肉が真ん中からブチっと切れることはまず無いんです。
実際に一番肉離れが起こりやすい場所は、筋肉と骨をつないでいる腱という場所におこりやすく、特に坐骨(座った時に骨が当たる場所)に付着している腱付近が損傷をおこしやすいと言われています。

次にハムストリングの肉離れといっても、どこの筋肉に生じるかも異なってきます。
実はハムストリングというのは4つの筋肉を総称した名前であって、一つ一つの筋肉でも機能が異なってきます。
そしてハムストリングの肉離れでは4つ全ての筋肉に損傷がおきることはすごーく稀なことであり、ほとんどの場合は一部の筋肉の損傷なのです。
ハムストリングの中で特に肉離れがおこりやすい部位は、ハムストリング外側にある大腿二頭筋(Biceps Femoris)が圧倒的、続いてハムストリング内側の半腱様筋、半膜様筋が同じくらいの頻度でおこると言われています。
それでは、肉離れをしてしまった場合、どうすればいいのでしょうか?
予防できればそれに越したことはないでしょうが、おこってしまったものは仕方ないですね。
大事なのはできる限り悪化しないようにしなければいけません。
さて、ハムストリングのケガの後に避けるべきことを2つあげます。
①ストレッチ
②完全休養
以外に思ったかも多いかもしれませんので、少し解説して行きたいと思います。
【ストレッチ】
実はストレッチは症状を悪化させてしまう可能性があります。
ケガの直後に過度にストレッチすることは逆に症状を悪化させてしまいます。
例えば、切れそうなゴムをさらに伸ばし続けたらどうなるでしょうか??最悪の場合、バチン切れてしまいますね。ハムストリングも同じです。
確かに柔軟性はそれなりに必要かもしれません。ただ、最近の研究では柔軟性は筋挫傷のリスクファクターにはならないという見解も出ています。柔軟性が低下すればいろんな弊害も出てきますのでやはりある程度の柔軟性は保っておいたほうがいいかもしれませんが、ケガの直後に過度のストレッチをすることは逆に症状を悪化させてしまいますので症状が改善するまで控えてください。
【完全休養】
これも意外かもしれません。RICE(Rest, Ice, Compression, Elevation)という言葉があるくらいですので怪我の直後は安静にすることが必要と思うのが普通だと思いますし、もちろん患部を悪化させないためにも安静にすることは大事です。
ただ、ここでいう完全休養とは患部を全く動かさないことを指します。先ほどのケガの直後にストレッチは逆効果と少し矛盾するかもしれませんが、
”ストレッチ禁止=全く動かさない”
ではありません。
むしろ、症状を見ながら患部を徐々に動かしていく必要があります。
このことを可動域エクササイズといい、痛みのない範囲で徐々に可動範囲(動かせる範囲)を広げていくことがリハビリ初期ではとっても重要なんです。
それでは、なぜ全く動かさない状態の完全休養がだめなのでしょうか?
実はケガの直後、細胞では自己再生が活発におこなわれます。ただし、再生されたばかりの細胞はまだ未完成の未熟な状態であって、この状態では元のような柔軟性や強度に耐えうる耐久性などがまだ備わっていません。
しかし、私たちの体にはホメオスタシス(環境に適応)という最強の武器を備えています。
ここで細胞に適度な負荷を加えてあげることで、細胞がその負荷に適応して段々と元の耐久性を取り戻していきます。これは、癒着や瘢痕組織(Scar tissue)を防ぐ意味でもすっごく大切なことでもあります。
つまり、適度な負荷をかけてあげると、
①新しく再生された細胞が元の強度を取り戻していく
②怪我の受傷後に起きやすい癒着や瘢痕化を防ぐことができる
これによって後のリハビリがたいへんスムーズとなってくるのです。
救急措置でよく使われるRICE(Rest、Ice、Compression、Elevation)は最近ではRestをOptimal Loading(最適な負荷)に置き換えPOLICEといったり、PEACE & LOVE(Protection・Elevation・Avoid Anti-inflammatories・Compression・Eduction・Load・Optimism・Vascularization・Exercise)といったりもしています。
POLICEとかLOVE&PEACEとかのアクロニウムはどうであれ、それだけ早期から症状に見合った負荷をかけてあげることが大切であるということかもしれません。
最後にアイシングはした方がいいかという疑問があると思いますが、私個人的な意見では受傷直後はアイシングはおこなった方が良いと思います。
アンチアイシングの意見もあると思いますが、受傷直後にアイシングをして治りが遅くなることはまずないと思います。
ただし、急性期をすぎてのアイシングは細胞の再生環境に影響を与えるかもしれませんので、急性期以降はアイシングをしてもそれほど効果があるわけではないので、徐々に切り離していく必要があるでしょう。
いかがでしたでしょうか?ハムストリングの肉離れはスポーツ現場でも頻繁におき、長期にわたる競技離脱も余儀なくされるケースも多くある怪我の一つです。
また、ハムストリングの肉離れはかなり高い確率で再発しやすいケガでもあります。
その原因として、
①初期処置のエラー
②不十分なリハビリテーション
③早すぎる競技への復帰
と原因をあげればキリがありません。
このことからも初期の処置、適切なリハビリテーションが怪我の予防、再発防止に欠かせません。
今回はハムストリング肉離れのメカニズムと初期処置の話となりましたが、またの機会にエビデンスに基づいた肉離れ予防の為のトレーニング、リハビリテーションをご紹介していきたいと思います。
今回もお付き合いありがとうございました。
アオキリョーキ
