膝シリーズ:膝蓋腱障害(Patellar Tendinopathy)のリハビリ パート1

日常生活や運動時に発生する膝の痛みに悩まされている方は多いと思います。

 

特に膝の前側にある痛み(Anterior Knee Pain)は膝の痛みで最も頻繁におこる病態であり、多くのアスリート達も悩まされています。

 

膝の前側に痛みがある場合、膝蓋腱になんらかの異常がある膝蓋腱障害(Patella Tendinopathy)の可能性があります。

 

 

今回はスポーツでも頻繁におこる膝蓋腱障害について、一体どのようなケガなのかをみていきたいと思います。

 

 

膝蓋腱とは?

まずは膝蓋腱(Pattella Tendon)とは何なのでしょうか?

 

 

膝蓋腱(Patella Tendon)とは”お皿”で知られる膝蓋骨脛骨に付着している腱で、大腿四頭筋という筋肉から伸びたきた腱のことをさします

 

特徴的な点として、大腿四頭筋の腱は一度膝蓋骨に付着、そして再び膝蓋骨から脛骨に伸びているので靱帯のような特徴を持ち合わせいるという点です。

 

このことから時に膝蓋腱を”膝蓋靱帯”と呼ぶ場合もあります。

 

しかし、腱自体は大腿四頭筋の一部であって腱の性質がより強いため”膝蓋腱”と呼ぶ方が正しいと思います。

 

 

さて、膝蓋腱炎は英語でPatellar Tendinitis といいますが、その呼び方は近年されないようになってきました。

 

この理由はというと、膝蓋腱の痛みは炎症 (-itis)で引き起こされているというよりは腱の変性 (変性, -osis)に寄るところが大きいという説が提唱されてきていることに関係しています。

 

 

ただ、腱の痛みと炎症の関係性はエビデンスにもあり、切っても切り離せない部分でもあります。

 

炎症も多少なりは腱の痛みに起因しているというエビデンスもあることから、現在は膝蓋腱の痛みをPatellar Tendinopathy(膝蓋腱障害)と総称して呼んでいます。

 

 

日本ではまだ膝蓋腱炎の方が認知されていると思うのでどちらを使っても特に問題ないと思います。(腱の痛みには変わりはないので)

 

 

膝蓋腱障害の症状

膝蓋腱の主な症状ですが、

 

  • 膝蓋骨下 (Inferior Pole of Patella) の局所的な痛み
  • 荷重に伴う痛み。荷重の大きさに比例して痛みが増す。
  • ジャンプやダッシュからのストップ動作時の痛み
  • 膝に負荷がかからなければ痛みは比較的軽い、あるいは痛みが治まる
  • 運動開始後に痛みがだんだんと収まってくる。競技を停止するとまた痛みが増す。
  • 一般的に痛みのでる頻度は運動量に比例する。(例えば、運動量が多くなることで痛みの頻度が増すが、運動量を減らすと痛みの頻度も減少する)

 

また、長時間座った状態やフルスクワット、階段の昇降などで痛みが伴うなど、膝蓋大腿関節(PFPS)の痛みと同じような症状を呈する場合がある。

 

 

膝蓋腱障害の原因

他の障害と同じように一つの要因が怪我を引き起こすということはまずありえなく、膝蓋腱障害にも様々な要因が関連していると考えられます。

 

ただ、一番の要因は使い過ぎによるオーバーユーズであるこということはエビデンスでも実証されています。

 

まず怪我がおこるメカニズムとしては一般的に内的要因外的要因が関連してきます。

 


内的要因とは

  • 性別
  • 人種
  • 遺伝
  • 骨組成
  • 筋長、筋力、筋柔軟性
  • 関節可動域

 

一方で外的要因とは、

  • トレーニング量
  • トレーニング内容
  • スポーツの種類
  • トレーニング環境

をさします。

 

 

膝蓋腱障害に関しては、内的要因よりもトレーニング量や環境などの外的な要因がより深く関係していると言われています。

 

 

これは膝蓋腱の痛みは膝の運動量に比例しておこるということ、また痛みは膝にかかる負荷量に比例するということからも想像できるかと思います。

 

 

現在のところで実証されている要因としては

 

  • トレーニング量:週のトレーニング量と膝蓋腱障害に相関関係がある
  • トレーニングサーフェス:コンクリートなどの硬いサーフェス環境で練習をおこなう選手に膝蓋腱障害が多く認められた。

 

また、エビデンスレベルではないが何らかの関係性があるのではないかと言われている要因では、

 

  • 股関節伸展筋の筋力(主に臀筋群、ハムストリング)
  • 大腿四頭筋とハムストリングの柔軟性
  • 着地のフォーム
  • スポーツの早期専門化
  • ジャンプパフォーマンス

などがあげられています。

 

先ほども述べた内的要因となる膝アライメント(例えばQ-Angle、Patellar Altaなど)はそこまで影響を与えないと考えられています。


また、興味深かったのはパフォーマンスが高い選手ほどリスクが上がるという点です。

 

やはりGround Reaction Force(地面から跳ね返ってくる反動力、ジャンプ力に比例する)が高い選手の方が腱にかかる負荷が大きくなるということなのでしょうか。

 

野球で球速が速い選手の方が肘の靭帯を損傷しやすいということと何か通ずるものがありますね。

 

 

そして、このPatella Tendinopathyバレーボールとバスケットボールなどの繰り返しジャンプ動作をおこなうスポーツに最も多く発生する傾向があります。

 

また幼少期から一つのスポーツを特化しておこなうスポーツの早期専門化(Early Specialization)も大きなリスク要因となります。

 

近年スポーツの早期専門化や一年中同じスポーツだけをおこなうことでおこるネガティブ要素が段々と強調されるようになってきました。

 

膝蓋腱障害だけでなく一般的におこる慢性的なスポーツ障害は早期から一つのスポーツに特化する専門化が大きく起因している可能性が非常に高いです。

 

 

さてパートIIでは実際に膝蓋腱障害に対するトリートメントと予防策について触れていきたいと思います。

 

References:

  • Superior results with eccentric compared to concentric quadriceps training in patients with jumper’s knee: a prospective randomised study 
  • Maffulli N, Khan KM, Puddu G (1998) Overuse tendon conditions: time to change a confusing terminology. Arthroscopy 14(8):840–843

  • Khan KM, Cook JL, Bonar F, Harcourt P, Astrom M (1999) Histopathology of common tendinopathies. Update and implications for clinical management. Sports Med 27(6):393–408

  • CURRENT CONCEPTS IN THE TREATMENT OF PATELLAR TENDINOPATHY IJSPT 2016 
  • Rehabilitation of Patellar Tendinopathy Using Hip Extensor Strengthening and Landing-Strategy Modification: Case Report With 6-Month Follow-up JOSPT 2015 Patellar Tendinopathy: Clinical Diagnosis, Load Management, and Advice for Challenging Case Presentations 
  • Patellar Tendinopathy: Clinical Diagnosis, Load Management, and Advice for Challenging Case Presentations 
  • Cook JL, Purdam CR. Is tendon pathology a continuum? A pathology model to explain the clinical presentation of load-induced tendinopathy. Br J Sports Med 2009;43:409–16.
  • Neovascularisation and pain in jumper’s knee: a prospective clinical and sonographic study in elite junior volleyball players 
  • Ferretti A (1986) Epidemiology of jumper’s knee. Sports Med 3(4):289–295

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