近年筋トレが野球界にも浸透し、今や高校球児も当たり前のようにウエイトトレーニングをしていると耳にします。
現に、今日びの高校生は金属バットのおかげもありますが、当たればホームラン、ピッチャーであれば、投げれば150kmを連発する選手を見るのが目立つようになりました。
勿論、技術的な部分も多いに関係していますが、個人的にはウエイトを始めとした身体的なトレーニングで、一昔前と比べ基礎体力が上がっているということも大きく関係していると思いますし、個人的には良い傾向ではないかと思います。
昔と比べ、今日びの高校球児のスイングの速さは目に見張るものがありますし、自分がサードだったら間違いなく体を張って打球を止めにはいかないでしょう。
また、ピッチャーでも自分の頃は140km投げる選手は怪物的な存在だったのが、今では強豪校だったらそのくらいのスピードを投げる投手が2−3人は同じチームにいるのが現状です。
それでは、野球選手は一体どのようなトレーニングをしているのでしょうか?
私が日本でよく目にしたり耳にしたりするのは、大きな筋肉を効率よく鍛えることができるベンチプレス、スクワット、デッドリフトなどの知る人ぞ知るビッグ3と言われるウエイトトレーニングの代表格がかなりの確率でプログラムに組み込まれているようです。
ただ、いろんなトレーニングがある中でなぜこのビッグ3が重宝されているのかは謎でもあります。いずれにせよ、トレーニングには必ず目的があり、目的に沿ったトレーニングを行うことが何よりも重要です。ビッグ3も目的に沿わなければ、ただの効率の悪いトレーニングになってしまいます。
そしてこれは今回のテーマにも関係することでもありますが、ビッグ3の一つである
ベンチプレスは野球選手に必要か!?
という本題に入っていこうと思います。
【野球選手のベンチプレス】
いきなり自分の結論からいかせていただきます。
必要性はないです。
今回はこれでお終い、、、、、としてしまいたいですが自分の見解も加えながらどうしてこのような考えを持つのか語らせてもらいたいなと思います。
あくまでこれは個人的な意見でもありますので、特にエビデンスがあるわけでもないです……………確かにベンチプレス賛成派の意見『ベンチプレスで鍛えられる胸筋は投げる時に腕を加速させる重要な筋肉!』という考えを否定する気はないですし、色々な理論があってそれはそれでいいと思います。
でも、私の中では、おそらく野球選手にベンチプレスを勧めることも自らのメニューに組み入れることもないと思います。それは以下の理由によるものかなと思います。
①肩への負担
②野球選手の動きにベンチプレスのような動きはない
【肩への負担】
野球選手、特にピッチャーやキャッチャーが最も多く酷使する体の部分はどこだと思いますか?おそらく毎日何百球と投げている肩でしょう。シーズン中にはそれこそ毎日何百球という数を投げ、肩や肘に大きな負担をかけているのに、なぜわざわざベンチプレスでまた大きな負担をかけなければいけないのでしょうか。シーズン中は勿論のことですが、これはオフシーズンにも該当することです。勿論オフシーズンは次のシーズンで飛躍するためにガンガン鍛えるためにあるという考えは間違いないです。ただ、オフシーズンにあるもう一つの大きな目的である、シーズン中に溜まった疲れをしっかりと癒すことを忘れてはいけません。まずは体と心をリフレッシュすることが最も肝心ですし、これがオフシーズン中のトレーニングを成功させる重要な秘訣でもあります。ガンガン鍛えるという意欲は大切ですが、まずは体をリフレッシュさせること、これが何よりも専決です。
では、なぜベンチプレスというエクササイズは肩に大きな負担をかけてしまうのでしょうか?
それは、ベンチプレスのフォーム自体に関係してきます。ベンチプレスとは、ベンチに背中全体を固定した状態でバーベルを胸の前で上げ下げするというトレーニングですが、このフォーム自体肩に非常に大きな負担をかける恐れがあります。
まず、バーベルを胸の前まで下ろしてきた時の肩の位置に注目してみてください。

バーベルを胸の前まで下ろしてきたときに肩の位肩は水平伸展 (Horizontal Extension)という位置に置かれた状態になっています。

この水平伸展という位置は、肩の前部分にある靱帯や関節包といった肩を安定させる組織に負担をかける位置でもあります。この部分が損傷してしまうと、肩の安定性自体が失われ、肩関節障害や脱臼を引き起こす原因にもなります。勿論肩を安定させるローテーターカフというインナーマッスルが働くおかげで肩は多少なりとも安定させられていますが、やはり根本的な安定機構が破綻するとそれだけで肩は不安定な状態になり、関節自体に余分な負担をかけてしまいます。

次に、ベンチプレスで背中が固定されることも肩に大きな負担をかける原因でもあります。背中をベンチに固定された状態では上背部の動きが制限されてしまい、その分肩関節自体が大きな範囲で動こうとします。しかしながら、両手をバーベルで持つためにそれほどまで腕に自由な動きができず、肩が一定の範囲内で固定されてしまい力がうまく分散されないために直接の負担が肩にかかってしまいます。
このように、私的にはまず肩への負担が大きいということがベンチプレスを敬遠する理由の一つとなります。
【②野球選手の動きにベンチプレスのような動きはない】
野球の動きを想像してみてください。どこの場面で、ベンチに体を固定した状態で、肩を90近くまで上げて肘を曲げ伸ばしするというような動きがあるでしょうか。おそらくそんな場面はないと断言してもいいかなと思います。
ただ、このように言うとおそらくこんな意見も出てきそうです、、、
”ベンチプレス自体は野球の動きに関係ないけど、腕を加速させたり、強いパンチ力に必要な筋肉を鍛えるのに有効だから”
確かにベンチプレスで鍛えられる胸筋は、内旋という投げる時に腕を振り下ろす動作、またバッターであれば球を押し込む際に働く大事な筋肉です。ただ、腕を加速させる動作やパンチ力は一部の筋肉だけで成り立っているのでしょうか?
おそらく違いますね。
運動学的に言うと、体全体の関節や筋肉がうまく連動することで動作が確立されますし、素早い鞭のようにしなる腕の振りや強いパンチ力も体がうまく連動することで生み出されます。
ただ誤解がないようにしていただきたいのは、”胸筋自体に筋肉をつけてはダメ”という考えではないということです。
勿論、爆発的なパワーを生み出すのに筋力は欠かせません。筋力(筋が発揮できる力のこと)を手っ取り早くつけたいのであれば筋面積を増やすこと、つまり筋肉量を増やすことですし、ある程度の筋肉は筋力の向上には必要です。
ただ、爆発的なパワーは筋力だけでなく、スピードも大きな要素として関わってきます。過度の筋肉は、筋力を向上させてもスピードに対してネガティブに作用してしまいますので、筋肉=筋力=パワーとはいきませんし、パワーを向上させるために筋力と速度のどちらを重視するかの線引きも大事になってきます。
自分が言いたいのはこういうことです。
”ベンチプレスじゃなくても肩に負担をかけずにベンチプレスと同じ筋肉を鍛える方法はいくつもある”
例えば、同じプッシュ系(前に押す動き)を行いたいのであれば、ケーブルプレスやランドマインプレスなど、より野球の動きに近い立った姿勢で同じ胸筋を鍛える方法もありますし、腕立て伏せでも立派なプッシュ系のトレーニングです。
大事なのは、筋肉を鍛えること自体を目的とするのではなく、動作を鍛えるということが肝心です。
これは野球だけでなく他のスポーツでも言えることですが、折角トレーニングで発達した筋肉も動きに繋がなければ全く意味がないですよね。
例えば、体がごっついボディービルダーの方達が140kmを投げれるかというとそうでもないですよね。
野球に限っていうと、ボールのスピードやスイングスピードを上げる最も重要な要素って実は筋肉自体ではないんです。
実は、水平方向への爆発的な加速力がスピードのあるボールを投げたり、バットスイングを速くするための要素と言われています。
水平方向への加速力とは、体を水平方向(横方向)へ如何に速く加速させることができるかという能力のことであり、この能力が高いほど速い球を投げること、より素早いスイングをすることを可能にしてくれます。
実はこの水平方向への加速力は、上半身よりも殆ど下半身や体幹から生み出されます。これが、野球選手は下半身が命だ!と言われる所以かもしれませんね。
確かにメジャーリーガー達はみんなごっつい体をしており、上半身のデカさばかりに目がいってしまいがちですが、上半身に負けないくらいお尻周りの筋肉も発達しています。実はこのお尻の筋肉こそ爆発的な力を生み出す源なんです。
このように、必ずしも上半身に筋肉をつけたからと言って、それがパフォーマンスに繋がるとは限りません。やはり重要なのは、目標設定をし(野球選手であれば140kmを投げるなど)、目標達成のためにはどのような動作が必要なのか、そしてどのようなトレーニングがより効率的にその動作を高めることができるのかをしっかりと考えなくてはいけません。
今回の要約としては、
- 野球の競技力アップにあえてベンチプレスをおこなう必要性はない。トレーニングは無数にある
- 筋肉を鍛えることよりもムーブメント自体に重きを置く
ということをメッセージとして残したいと思います。
また機会があればアメリカの高校球児やプロの選手達がオフシーズンにどのようなトレーニングをしているのかをご紹介できればと思います。
