ストレッチの種類

皆さん、ストレッチとは言ってもいろんな種類のストレッチがあるということはご存知でしょうか。

実はストレッチには柔軟性を高める目的のものから、パフォーマンスを高めることに焦点を当てたものなど用途に合わせ様々なストレッチが存在します。逆にいえば、用途を間違えるとストレッチがパフォーマンスに影響を及ぼす場合も有るので、目的に応じてストレッチの種類を選ぶ必要があります。

アスリートやこの業界に詳しい方などは、

”知ってるよ、スタティックストレッチ(静的ストレッチともいい、ほとんどの方が柔軟と聞いて思い浮かべるであろうストレッチ方法)は競技力を低下させるからやらないほうがいいんだろ” 

と言った様な声が聞こえてきそうですね。

そう言わず、是非お付き合い頂きたいと思います。

冒頭でも述べたようにストレッチにはいくつかの種類が存在します。今回は各ストレッチの特徴について紹介していき、どのような用途で使うと一番効果的であるかを検証していきたいと思います。

スタティックストレッチ(静的ストレッチ)

まず、最初にご紹介するストレッチはスタティックストレッチといい、筋を一定のポイントまで伸ばし止め、じわーっと筋肉を伸ばしていくストレッチです。

メリット

スタティックストレッチを使用する最大のメリットは、

筋肉の柔軟性を高めることが期待できることでしょう。

1980年代から怪我の予防と柔軟性の改善を目的にスタティックストレッチは幅広く行われてきてきました。おそらくほとんどの方が運動の前にはストレッチをおこなうと思いますが、このスタティックに筋肉を伸ばすストレッチを行なっているのではないかと思います。昔、体育の体力測定などで長座体前屈を行なわされきた方もいるかと思いますが、長座体前屈のような様式のストレッチは典型的なスタティックストレッチの例です。

スタティックストレッチは多くの文献でも柔軟性の改善に効果があることがサポートされていますし、柔軟性が改善することで怪我の予防にも効果があること実証されてきています。(1, 2, 3, 4)

デメリット

スタティックストレッチのデメリットとして考えられるのは、

運動前におこなうとパフォーマンスが低下する可能性がある

ということでしょう。

少し検証して行きましょう。

なぜスタティックストレッチはパフォーマンスを低下させてしまうのでしょうか?

実は筋肉は柔軟であればいいというわけではなく、Length – Tension Relationshipと言い、筋自体の最適な長さが存在します。

最適な長さを越えた場合、筋収縮に余計な手間をかけてしまい、筋力発揮を低下させてしまうかもしれません。逆に筋が短くなった状態(短縮)では最大限の収縮を引き起こすことができず、これまた思うような筋収縮を得ることができず筋力発揮を低下させてしまうかもしれません。最大限の筋収縮を起こすためには長くも短くもない、筋肉が最適な長さである必要が有ります。

もう一つ考えられる理由としては、ゴルジ腱反射と言われる、身体に元から備わっている防御反応が働くことによって筋肉が緩ませられるということが考えられます。このゴルジ建反射は怪我から身を守るために備わっている非常に大切な機能であるのですが、筋力を発揮させたいケースでは悪役となってしまいます。

では、スタティックストレッチは本当にパフォーマンスを低下させてしまうのでしょうか?

残念ながら、未だに専門家の間でも意見が分かれています。専門家の間でもスタティックストレッチは長い間パフォーマンスを低下させるおぞれがある為に、競技前には禁忌とされてきてきました。しかし、ストレッチで得たい効果にもよりますし、競技によってどのようなパフォーマンスが必要なのかでも変わってきますので、一概にスタティックストレッチはだめだ!とは言えないです。

ただ、一つ文献でも確証が取れていることが有ります。

それは、スタティックストレッチはパワー、スピード系のパフォーマンスには逆効果である (5, 6)

ということです。

力強い筋収縮が必要な瞬発力・パワー系の動きでは、スタティクストレッチによって筋が緩んだ状態となるため不向きで有ります。

ダイナミックストレッチ

スタティックストレッチとは異なり、体を動かすことで筋肉をストレッチするやり方をダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)といいます。

メリット

ダイナミックストレッチの最大の利点は、パフォーマンスに影響を与えず柔軟性を高めることができることです。(7, 8, 9)

ダイナミックストレッチでは、動きを織り交ぜながら筋を伸ばすため、スタティックストレッチで起こるようなネガティブな要素も引き起こされることもないですし、血流の増加によって体を温める効果も期待できるので、運動前のウォームアップとして最も最適なストレッチであると言えます。

デメリット

柔軟性を改善することに関しては不向きであると言えます。例えば、筋の柔軟性を高めるためにはある程度時間をかけたストレスが必要であり、ダイナミックストレッチのような瞬間的にストレッチする方法では柔軟性を高めるための十分なストレスをかけることができず、期待できる効果が得ることが出来ません。

また、クールダウンで筋肉をリラックスさせたい時などにも不向きで有ります。

バリスティックストレッチ

ダイナミックストレッチの一つで有り、反動をつけることで筋肉を伸ばす方法です。

メリット

ダイナミックストレッチと同じく、身体を動かしながらおこなうストレッチであるため、パフォーマンスに影響を与えず筋肉をストレッチすることができるということが期待出来ます。特に素早くストレッチすることにより、筋肉に備わる機能の筋紡錘という受容器を刺激するため、神経の働きを高め筋肉を素早く収縮させることが期待できます。このことから、バリスティックストレッチはパワー、スピード系の運動を行う前に効果的なストレッチ方法であります。

デメリット

反動をつけて筋肉をストレッチする為、怪我をするリスクが有ります。また、一部の文献ではパフォーマンスを低下させる恐れがあるという意見も有ります。

Proprioceptive Neuromuscular Facilitation (PNF)ストレッチ

PNFストレッチといい、日本語では固有受容器神経筋促通法といいます。固有受容器という感覚器官に刺激を与えて筋肉を緩ませることで柔軟性を高める徒手療法の一つであり、よく治療家の人達が使用する方法です。

固有受容器とは、筋肉や腱(筋肉と骨をつなぐ軟部組織:例、アキレス腱)に埋め込まれている、筋肉の長さや腱の張力の変化などに反応し、その情報を中枢神経に送る感覚神経の一つです。

冒頭でもご紹介した、ゴルジ腱や筋紡錘も固有受容器の代表格で有り、これ器官のおかげで私たちは筋肉の長さ、張力の変化などを常に感じ取ることができています。

PNFでは、筋収縮を引き起こすことでゴルジ腱を働かせ、筋肉を緩ますAutogenic Inhibitionという神経系性質を利用し、一時的に筋肉の柔軟性を高めることができます。また筋肉がストレッチされることで今度は筋紡錘が刺激され、Reciprocal Inhibitionと言う神経系性質を引き起こし、ストレッチした筋肉を収縮させます。

つまり、PNFはスタティックストレッチとダイナミックストレッチ両方で得られる効果が期待出来ます。

しかし、PNFストレッチとパフォーマンスの相関性を調べた研究が少ないこと、また一部の文献では運動前におこなうことでパフォーマンスを低下させてしまうという意見も有ることから、PNFストレッチがパフォーマンスにどのような影響を及ぼすかまだ研究が必要です。

いかがでしたでしょうか、

ストレッチにも色々な種類が有り、得られる効果も変わってくること為、用途に合わせた使い方をすることが大切であります。

次回は、最大限の効果が得られるストレッチの方法について検討していきたいと思います。

References:

1. Godges JJ, MacRae H, Longdon C, Tinberg C, MacRae P (1989) The effects of two stretching procedures on hip range of motion and gait economy. Journal of Orthopedic Sports Physical Therapy 1: 350–357.

2.  Osternig LR, Robertson RN, Troxel RK, Hansen P (1990) Differential response to proprioceptive neuromuscular facilitation (PNF) stretch techniques. Journal of Medicine and Science in Sports and Exercise 22(1): 106–111.

3.  Wallin D, Ekbolm B, Grahn R, Nordenborg T (1985) Improvement of muscle flexibility: A comparison of two techniques. American Journal of Sports Medicine 13(4): 263–268.

4.  Wiktorsson-Moller M, Oberg B, Ekstrand J, Gillquist J (1983) Effects of warming up, massage, and stretching on range of motion and muscle strength in the lower extremity. American Journal of Sports Medicine 11(4): 249–252.

5. Cramer, JT, Housh, TJ, Johnson, GO, Miller, JM, Coburn, JW, and

Beck, TW. Acute effects of static stretching on peak torque in

women. J Strength Cond Res 18: 236–241, 2004.

6. Cramer, JT, Housh, TJ, Weir, JP, Johnson, GO, Coburn, JW, and

Beck, TW. The acute effects of static stretching on peak torque,

mean power output, electromyography, and mechanomyography.

Eur J Appl Physiol 93: 530–539, 2005.

7.  Hough, PA, Ross, EZ, and Howatson, G. Effects of dynamic and static stretching on vertical jump performance and electromyographic activity. J Strength Cond Res 23: 507–512, 2009.

8.  Little, T and Williams, AG. Effects of differential stretching protocols during warm-ups on high-speed motor capacities in professional Soccer Players. J Strength Cond Res 20: 203–207, 2006.

9.  Perrier, ET, Pavol, MJ, and Hoffman, MA. The acute effects of a warm-up including static or dynamic stretching on countermovement jump height, reaction time and flexibility. J Strength Cond Res 25: 1925–1931, 2011.

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